昔に比べて随分と暮らしやすくなった障がい者の暮らしですが、働くことができる障がい者にとって、就職問題というのは今も変わらず困難な状況にあります。
多くの従業員がいる会社では社員全体の何割かで障がい者の雇用が義務付けられているんですが、こういう事も一般には知られていません。
まだまだ知られていない事のほうが多い障がい者の雇用について、この際ですからしっかり調べてみようと思い、ペンを取りました。
仕事を探す手段としてハローワークがありますが、自分に合う職場を探し、うまく就職できるのは、ほんの一握りの障がい者だけです。
ユニクロなどの障害者雇用に力を入れている企業でも就職できる枠は限られています。
中には等級の高い障がい者をたくさん雇用して補助金を得ようとする会社がありますが、補助金は等級ではなく何人の障がい者を雇用したかによって支給されます。
そういう障害者雇用の中身をまだよく分からないという企業の方にも一度目を通してもらいたいです。
障害者雇用とハローワーク
働くところを探す時に多くの方が思い浮かぶのが「ハローワーク」ですが、当事者さんの話を聞いていると、ハローワークで就職先を見つけるのもなかなか厳しいようです。
企業にとって、障がい者を雇用する事はメリットもありますが、デメリットもあります。
メリットとして言えるのは、障がい者と接することで健常者の社員に新しい感覚が生まれるということです。
今まで障がい者と接したことのある人も、ない人も、障がい者と仕事をするのが心地いい人も、快く思わない人もいて当然ですが、そのどれもが新しい感覚のはずです。
障がい者と実際に接してみて、結果的にそれが会社のために良いことならメリットになりますし、悪いことならデメリットになる。
ということです。
障がい者を雇用することに躊躇する企業が今だに多いのは、これまで書いてきた内容が大いに影響しているという事にもなります。
そんな障がい者を雇用することにかけて、ユニクロの取り組みはちょっとした衝撃でした。
画期的な方法で障がい者が力を発揮する場を与えてくれたのです。
障害者雇用とユニクロ
障害者雇用について、ユニクロのことがよく話題に挙がります。
ユニクロでは各店舗に1名障がい者を雇用することを目標にしていて、現在ほとんどの店舗でそれが実施されています。
でも、障がい者を雇用している企業はユニクロだけではありません。
なぜユニクロだけが目立つのでしょうか。
雇用された先での障がい者の仕事といえば、トイレの清掃や倉庫の積み込み作業など、お客様の目に入らない仕事ばかりになってしまいがちです。
もちろんトイレ掃除も立派な仕事です。
表に出るだけの仕事が良いとは言いませんが、障がい者が働ける場所としては、ある程度は限られた仕事になってしまうのは仕方のないことです。
ですが、ユニクロは障がい者が一スタッフとしてお客様の対応にあたり、コミュニケーションをとりながら大きな支障もなく業務にいそしんでいます。
それが出来る障がい者を選んで雇用しているだけだ。
と言われればそれまでなんですが、ユニクロが注目されているのは、それすらしてこなかった企業が多い中、本当に障がい者を接客にまわして仕事として成り立たせているからなんです。
比較的軽い障がいから、重度の障がいまで、その人によって働ける場所や仕事内容、時間まで大きく変わってきます。
それをどうやって決めるのか、という基準の1つに「等級」があります。
障害者雇用と等級
障がい者を雇用する時に大きな比重を占める「等級」重度になるほど等級が高くなるのですが、この等級によって色々なものが決まってきます。
給料の上限から働ける時間の割合、それに加えて低い等級の障がい者二人で等級の高い障がい者一人と算定されます。
等級の高い障がい者、つまり重度の障がい者を雇用するということは、それだけ教育する側にも配慮が求められますし、コストもかかります。
それに見合った補助金が出る理由も分かりますが、等級で全てを決めるのはどうかと思います。
企業によっては入社の条件に「○等級以上」と記載していたりします。
障がい者本人を見てからの判断だったら当人も納得いくと思いますが、等級で決められると、どうしようもありません。
障がい者にとって「等級」とは自分の意思とは関係なく勝手に付けられた順位のような気がしてなりません。
平成25年の障がい者の就職率は46%で4年連続で上がっています。
これが多いか少ないかは別にして、今までは「働けるところがあったら何でもいい」というスタンスで職を探す障がい者がほとんどでした。
ここ数年になって、ようやく自分がやりたい仕事を障がい者自身が選べるようになってきたのかな、と思います。
障害者雇用は状況を理解してから~まとめ~
障がい者にとって「働く」ということは、想像以上に困難な道のりです。
勤める会社の方針によってもかなり変わってきます。
リハビリの延長と捉えて、「のんびり焦らず」という方針で働かせてくれるところもあれば、即戦力として健常者と同じ部署に配属されたはいいが、明らかに実力が伴わずプレッシャーに押しつぶされてしまう障がい者もいたり、実に様々です。
その人を理解しようとする時に、『その人の立場に立って考えてみよう』と、よく言いますよね。
障がい者の相談を受けてきた中で一つ言える事は「障がい者の立場に立つことはできない」ということなんです。
障がい者が悩んでいる事に対して共に考え、一緒に悩むことはできても、本当のところは誰にも分からないんです。
悩みを打ち明けられた時、多くの人は何とかしてそれを解決しようとします。
もちろん解決できればより良いのですが障がい者の場合、まず話を聞いてくれることが一番の助けになるんです。
障がい者のことを理解することはできても、障がい者の立場に立つことはできません。
それでもその立場に立とうとしてくれる方を障がい者はちゃんと見ているんです。
障がいを理解するということは特に知識はいらないと思っています。
正面から向き合い、付き合っていくことで言葉では分からない絆が生まれるのだと信じています。
働くところが決まれば「ゴール」ではないんです。
働いてからが「スタート」なんです。
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